社会福祉法人会計の仕訳例



 下記の仕訳例のように一取引につき一仕訳を行なうと、自動的に財務3表が作成されます。

基本的な仕訳例

 1. 益金の発生

 例えば「運営費収入」のように事業活動の収入があった場合は次の通りです。

借   方 貸   方
現金預金    2,000,000円 運営費収入  2,000,000円

  • 介護保険料、利用料、措置費、経常活動補助金、寄付金収入、雑収入など事業活動に関わる収入の仕訳はすべてこのパターンで入力してください。
  • この仕訳で財務3表は次のようになります。
    借  方 貸  方
    貸借対照表 現金預金     増加 繰越活動収支差額 増加
    事業活動収支計算書 繰越活動収支差額 増加 運営費収入    増加
    資金収支計算書 支払資金     増加 運営費収入    増加


 2. 損金の発生

 例えば、消耗品を購入した場合の仕訳は次の通りです。

借   方 貸   方
消耗品費  20,000円 現金預金  20,000円
  • 事業活動に関わる支出科目は非常にたくさんありますが、すべて上記の仕訳パターンとなります。
  • 日常発生する仕訳の大部分は上記の二つのパターンですから、この二つの仕訳パターンを知るだけで、大部分の仕訳が可能になります。
  • この仕訳で財務3表は次のようになります。
    借  方 貸  方
    貸借対照表 現金預金     減少 繰越活動収支差額 減少
    事業活動収支計算書 経  費     増加
    繰越活動収支差額 減少
    資金収支計算書 経費支出     増加
    支払資金     減少


 3. 固定資産の取得

 法人の資金で固定資産を取得する場合は企業会計と同様に次の仕訳だけです。

借   方 貸   方
器具及び備品   500,000円 現金預金     500,000円
  • 資産計上のための切り替えし仕訳は不要です。
  • 損金や益金が発生しませんので、事業活動収支計算書は変化しません。
  • この仕訳で財務3表は次のようになります。
    借  方 貸  方
    貸借対照表 現金預金     減少
    固定資産     増加
    繰越活動収支差額 変化無
    事業活動収支計算書 変化無し 変化無し
    資金収支計算書 固定資産取得支出 増加
    支払資金     減少

 4. 非資金的な仕訳例

 非資金的な取引には次のようなものがありますが、通常の仕訳だけでOKです。
   ・ 引当金の繰入と戻入
   ・ 積立金の積立と取崩
   ・ 減価償却の計上
   ・ 基本金の組入と取崩

借   方 貸   方
減価償却額   500,000円 建  物     500,000円
  • 非資金的な取引はお金が動きませんのでの資金収支計算書は変化しません。
  • この仕訳で財務3表は次のようになります。
    借  方 貸  方
    貸借対照表 固定資産     減少
    繰越活動収支差額 減少
    事業活動収支計算書 減価償却額    増加
    繰越活動収支差額 減少
    資金収支計算書 変化無し 変化無し


よく使うセット仕訳の例
 1. 給与の支給

仕訳の基本は次のとおりです。

借   方 貸   方
現  金 1,100,000円 預  金 1,100,000円
職員本俸 1,000,000円 現  金 1,000,000円
職員手当 300,000円 現  金 300,000円
現  金 100,000円 預り金(所得税) 100,000円
現  金 50,000円 預り金(住民税) 50,000円
現  金 30,000円 預り金(社会保険) 30,000円
現  金 20,000円 預り金(雇用保険) 20,000円

次のような複合仕訳もできます。
ただし、この場合は複合仕訳を行うと、相手勘定はすべて「諸口」になります。

借   方 貸   方
職員本俸 1,000,000円 預 金 1,100,000円
職員手当 300,000円 預り金(所得税) 100,000円
預り金(住民税) 50,000円
預り金(社会保険) 30,000円
預り金(雇用保険) 20,000円


 2. 預り金の支払

 通常の仕訳通り、次のように仕訳けてください。

借   方 貸   方
預り金(所得税)   100,000円 現金預金      100,000円
預り金(住民税) 50,000円 現金預金 50,000円
預り金(社会保険) 30,000円 現金預金 30,000円
預り金(雇用保険) 20,000円 現金預金 20,000円


 3. 流動資産の移動

 現金の引出しや預入れは通常通りの仕訳を行います。

(預金)
借   方 貸   方
預  金  500,000円 現  金 500,000円

(引出し)
借   方 貸   方
現  金  500,000円 預  金 500,000円



 4. 補助金等で固定資産を購入する場合

 「国庫等の補助金」を受けて固定資産を取得する場合の仕訳例を示します。
・例として、1,000,000円の固定資産を250,000円の自己資金と750,000円の補助金で取得する場合の仕訳

借   方 貸   方
@ 預  金 750,000円 設備等補助金収入 750,000円
A 国庫補助金等特別積立金積立額 750,000円 国庫補助金等特別積立金 750,000円
B 器具及び備品 1,000,000円 預  金 1,000,000円
  • @の仕訳で、国庫補助金等を受けます。
  • Aの仕訳で、国庫補助金等特別積立金を積み立てます。
  • 上記二つの仕訳で、事業収支の収入と支出は相殺されているので、この時点での収支差額は0円となります。
  • Bの仕訳で、資産の「器具及び備品」が1,000,000円増え、預金は@とBで相殺されて、250,000円少なくなり、その結果、支払資金は250,000円減少します。


 5. 寄付金で固定資産を購入する場合

借   方 貸   方
@ 預  金 5,000,000円 施設整備等寄付金収入 5,000,000円
A 基本金組入額 5,000,000円 基 本 金 5,000,000円
B 建  物 5,000,000円 預  金 5,000,000円


 6. 法人資産の減価償却の場合

 企業会計と同じ仕訳を行います。

(直接法場合)
借   方 貸   方
減価償却費 3,000,000円 建  物   3,000,000円

(間接法の場合)
借   方 貸   方
減価償却費      3,000,000円 建物減価償却累計△ 3,000,000円

間接法で行なう場合は、それぞれの固定資産に減価償却の累計額の科目を設定してください。

 7. 補助金がある資産を減価償却する場合

 上記例について、3/4の2,250,000円が国庫補助金の減額分になりますので、次のように仕訳を行います。

借   方 貸   方
@ 減価償却費 3,000,000円 建  物   3,000,000円
A 国庫補助金等特別積立金 2,250,000円 国庫補助金等特別積立金取崩額 2,250,000円
  • この二つの仕訳により、建物は△3,000,000円の償却になりますが、当期の収支差額には3,000,000円-2,250,000円、すなわち、750,000円が計上されることになります。

 8. 積立金に関する仕訳

 備品購入のための積立金
借   方 貸   方
@ 備品購入積立金繰入 300,000円 備品購入積立金 300,000円
A 備品等購入積立預金 300,000円 預  金 300,000円

積立金を取り崩して備品を購入
借   方 貸   方
@ 備品購入積立金 300,000円 備品購入積立金戻入 300,000円
A 預  金 300,000円 備品等購入積立預金 300,000円
B 器具及び備品 300,000円 預  金 300,000円


 9. 資産計上が必要な退職金制度の掛け金

【積立時の仕訳】


借   方 貸   方
@ 退職給与引当金繰入 600,000円 退職給与引当金      600,000円
A 退職共済預け金 600,000円 預  金  600,000円
B 預り金 500,000円 預  金 500,000円

・ 注意) 職員の掛け金が無い場合は、この仕訳Bは不要です。


【退職時の仕訳】

掛け金よりも退職金が多い場合
借   方 貸   方
@ 退職給与引当金 1,000,000円 退職給与引当金戻入 1,000,000円
A 預  金    1,000,000円 退職共済預け金 1,000,000円
B 預  金    200,000円 雑収入 200,000円
C 退職金 1,200,000円 預  金 1,200,000円


掛け金よりも退職金が少ない場合
借   方 貸   方
@ 退職給与引当金 1,000,000円 退職給与引当金戻入 1,000,000円
A 預  金    800,000円 退職共済預け金 800,000円
B 雑  費    200,000円 退職共済預け金 200,000円
C 退職金 800,000円 預  金 800,000円